今月も、妄想あさこ食堂へようこそ。gozenのメンバー兼スタッフ(コンテンツクリエイター)のAsakoです。

「妄想あさこ食堂」とは
gozenのコミュニティメンバーさまが主人公となった読み物です。その方の暮らし方や考え方を覗き見ることで、新しい視点を見つけたり、勇気や力、ヒントが得られるかも!コラムの最後には「もしこの主人公が、架空のあさこ食堂に来てくれたら」を妄想しながら、メニューを考えておもてなし。時にはレシピもシェアします。

今月も妄想あさこ食堂へようこそ。今月は、大阪にお住まいのりえさんをお迎えします。

明るく楽しく健やか、その原点

お陽さまみたい。

りえさんと顔を合わせてすぐ、わたしの頭にそんなイメージが湧いてきた。顔を見て話をするのは初めてなのに、初めてじゃないみたい。次々とりえさんの口から出てくる自分語りが、彼女の活き活きとした口ぶりも相まって聞いている方までもが自然と笑顔になる。夏のはじめ、樹々の間からこぼれてくる陽の光を見上げるような気分。そんな彼女のイメージは、好きなことや生い立ちを聞いていくと「だからね」と合点がいく。

奈良県の旧都祁村、三重県との県境に位置する山の中でりえさんは生まれ育った。実家には田畑があって、学校から帰ると畑に行って旬の野菜をもぎって食べるのが毎日の習慣。春にはえんどう豆を生のままでつまみ、夏はプチトマトを口いっぱい頬張る。田植えの時期には家族みんなで田んぼに入り、泥だらけになる。今より二回りほど小さな体のりえさんが、そんな昔話をしてくれるときと同じくらい楽しそうに田畑を駆け回る様子が目に浮かぶような、幼少期の記憶。

田舎の家は、何かと親戚の集まりが多い。本家でもあったりえさんのご実家には、ことあるごとに親戚が集まり大人数で食事を囲むことも多かった。そんなお客さまのために、7歳の頃には自らレシピをめくりクッキーを焼いて振る舞ったりしていたそう。彼女が持つ生粋のおもてなし精神が、そんなエピソードから見えてくる。

やりたいことに、真っ直ぐ

楽しいことが好き、食にまつわることが好き、周りのひとが喜んでくれる顔が好き。自然豊かで、温かな人間関係に恵まれて成長する中で育まれてきた彼女の「好き」が、その後彼女が経験してきた仕事にもよく表れている。

高校卒業後は、イルカの調教師になるための専門学校へ。そこで出会ったダイビングにはまり、ダイビングショップへ。腰を患い、ダイバーの道を諦めたあとに飛び込んだのはパン屋さん……と、彼女の職歴の振れ幅はなかなかに大きい。面白そう!と興味を持ったらすぐ行動、見切りをつけるのも早いから飽きっぽいと言われる、と笑うりえさん。いやいや、ただの飽き性ではないでしょ。だってその後も、パン屋さんで手首を痛めたため事務仕事に就いてみたり、同時に興味のあったオーガニックカフェで働いたり。どんなこともそつなくこなす彼女のマルチプレイヤーっぷりが伝わってくる。

そうしていま現在は、食に関する会社で企画や製造・運営のサポートと幅広い業務に携わっている彼女。8年前、第一子を妊娠中に入社して以来、2人の出産育児を経ながら続けている仕事。小さなお子さんを抱えてのフルタイム勤務、旦那さんは1年前から単身赴任と聞いたらさぞ大変かと心配になるけれど、「ワンオペ育児も3日で慣れました、母強し」と、りえさんはどこまでも明るい。

おまけに、韓国料理にハマった時期は韓国料理の食卓を設えて友人たちを招いて振る舞ったり、日曜には半日キッチンにこもって旦那さんが赴任先で食べる作り置きを1週間分用意したり。「キッチンはわたしだけの城で落ち着く。料理をしていると無になるから一番のストレス発散」と、どこまでも明るいだけじゃない、とにかくエネルギッシュ。ここまでくると最初に感じたお陽さまの光が、木漏れ日から直射日光レベルへとパワーアップするのを感じる。

「元気」の源

「とにかく元気なんですよ、わたし」屈託のない笑顔でそう話すりえさんに、何度も首を縦に振るわたし。彼女の元気の源はこれまでの、そして今の「食」へのスタンスを聞いていくうちに、きっとそこに秘密があるんだろうなと思った。

実家の田畑で穫れた安全で新鮮な野菜やお米を当たり前のように口にして育った子ども時代。思春期のころはそれなりにジャンクフードも口にしたし、それらを美味しいと思った時期もあった。でも、実家から離れて大阪に住まうようになり、田舎では当たり前だった食環境の尊さに気付いた。今でも忙しい日には家族との外食も楽しむし、添加物を徹底して排除もしていない。友人家族とのパーティでみんなで囲むデリバリーピザの美味しさも知ってるし、実家の畑で獲れた曲がったキュウリがどれほど瑞々しく美味しいかも知ってる。そんな食の経験の豊かさが彼女の土台にあって、それがきっと大きな強みになっているのだ。

頭でっかちな「知識」で自分が食べるものは選ぶのではなく、あくまで感覚。幼少期の食経験から自分の体に必要なものは舌が覚えているから、素直に身体が欲するものを選びとるだけ。食材の選択基準は「好き」「美味しい」、生き様はそこに「楽しい」が加わる。右脳優位な感覚が、解りやすくて気持ちいい。

自分の感覚に、無邪気なこと

「この間占いでね、『天真爛漫』て言われたんですよ」純心で無邪気、明るい彼女をそのまま言い当てるような表現。これほどまでに言い得て妙な占いを、わたしはほかに知らないと思った。

生きることは食べること、食べたものでひとは作られる。のだとしたら、彼女のように自分の食べるものを動物的な感覚で選びとれるだけの無邪気さがあれば、生きることもひょっとしたらもっと自由に、楽しくなるんじゃないかな。

そう思ったら、彼女と話したあとはなんだかとても清々しい気持ちになった。真夏の太陽をいっぱい浴びて、気持ちよく汗を流したあとのように。

妄想あさこ食堂へようこそ

りえさんをお迎えする今月のあさこ食堂は、休日のお昼ごはん。仕事も家事も育児からも今日は束の間解放されて、たまには昼間っから呑んじゃおうぜ!な食卓。インタビューの中で毎日の晩酌が楽しみ!と意気投合したわたし達、りえさんの好きなハイボールがくいくい進んじゃうメニューに。

メインは、たっぷり玉ねぎのジューシーなシュウマイ。やっぱりこれは蒸したてを食べてほしい!だから、りえさんがテーブルで好みの加減のハイボールを作ってくれている間に、「出来たよー!」とホカホカ湯気の立つシュウマイを運んでいけるとベストよね、とか考えるわたし。そうしたらきっと、りえさんはあのキラキラした笑顔でシュウマイを頬張ってくれるに違いない…とさらに妄想は広がっていく。

シュウマイの合間につついてほしい野菜メインのアテも、数品用意して。蒸し鶏の胡麻ダレサラダに赤かぶの柚子マリネ、セロリのナンプラー漬けと小松菜の煮浸し。こってり、さっぱり、ピリリ、じんわり。バリエーション豊かな味と歯ごたえで飽きずに食べ続けられるように。

いつも「食べること・作ること」を通して家族や友人、大切なひとを尊ぶ気持ちを忘れないりえさん。今日はりえさんがもてなされる側になって、思う存分食べて呑んで、そしてもっともっとその周りまでをも元気にする笑い声を聞かせてほしいな。