今月も、妄想あさこ食堂へようこそ。gozenのメンバー兼スタッフ(コンテンツクリエイター)のAsakoです。

「妄想あさこ食堂」とは
gozenのコミュニティメンバーさまが主人公となった読み物です。その方の暮らし方や考え方を覗き見ることで、新しい視点を見つけたり、勇気や力、ヒントが得られるかも!コラムの最後には「もしこの主人公が、架空のあさこ食堂に来てくれたら」を妄想しながら、メニューを考えておもてなし。時にはレシピもシェアします。

今月の主人公は、アメリカ、シカゴ在住のえみさんをお迎えします。

主婦として、会社員として

「生活環境も教育システムも、シカゴでの暮らしは本当に快適。」

旦那さんの駐在帯同で、1年前からシカゴに移住したえみさん一家。えみさん自身が幼少期にシンガポールで暮らした経験、数年前に台湾での駐在経験もあり、14歳の息子さんも含めてアメリカでの生活は家族みんなスムーズに楽しめているという。

以前は総合商社の経理部で働いていたえみさん、出産を機に退職し専業主婦に。駐在に帯同したり、家族の看護に携ったりと数年は社会から離れ、家族と向き合う時間を過ごしてきた。専業主婦の暮らしに不満はなかったけれど、いつか社会復帰をという想いは持ち続けていたそう。

企業で定められたルールやビザの関係で、就労に制限が多いと聞く駐在の帯同生活、けれど昨今のルール変更によりえみさん自身の就労も可能となり、現地の日系企業への就職も叶ったのだそう。公私ともにえみさん自身がシカゴでの生活の「波に乗れている」様子が伝わってくる。

お金の有無に関わらず、皆が幸福に

「貧富の差なく社会貢献できる仕事に携りたい。」

えみさんがさらりと口にしてくれた職業観に、耳が、心が奪われた。かつて働いていた企業は、総合商社ゆえに扱う物やサービスは多岐にわたる。それは土木関係の仕事にも、だから例えば貧しい国で道路が出来れば実際にお金を払うのは国でもそこに住まう人びとが便利に暮らせるようになる、そんな仕事に魅力を感じて就職を決めたのだという。なんと崇高な動機かと、実は遠い昔、親のコネで総合商社に就職活動をした経験のあるわたしは穴があったら入りたい気分になる。

えみさんがそんな職業観を持つようになったのには、幼少期のシンガポール生活が大きく影響したそう。自分自身は過不足なく教育を受けられるのに、すぐ側に暮らす大人が読み書きも満足にできない現実。日々の生活の中で目の当たりにした貧富の差に衝撃を受けた。

生まれの違い、そのひと言で片付けられてもおかしくないこと。でもそんな現実に違和感を見出せるのは、えみさん自身がどんなひとに対しても公平で愛に溢れた目線を持てるからこそだと聞いていて胸が熱くなる。

「ビジネスである限り金銭の授受はあって然るべき。けれど、そこに直接の金銭のやり取りをしていないひともその恩恵が享受できるような社会貢献がしたい。」

えみさんが幼少期に得た気付きから商社勤務の社会人となり、日本だけでなく世界の国々を見て育んできた願い。いま再就職した会社では業態的にその願いが叶えられなくとも、えみさん自身が携る会社の管理的な業務は今後必ず役立つと思う。だから、目の前のやるべきことを丁寧に積み重ねていける。

この先に叶えたい夢が明確だからこそ、今がこの先に繋がっていく自信が持てる。今後行く先が決まっているから手段や道筋にはこだわらず、流れに任せていく。期限や手段で自分をがんじがらめにせず、その時どきの出来事や環境を楽しみながら。そうすればきっと上手くいく、えみさんのように。

相手に伝わりやすい言葉を無駄なく選んで話してくれるえみさんの声が耳に心地よくて、そんな気付きがすとんとわたしの中に落ちてきた。

子どもも、対等な「ひと」

そんなえみさんのスタンスは、息子さんとの関わりや教育観にも顕れている。シカゴでは大学受験以外はテストがなく、小学校入学から高校卒業まで自分の好きなことに没頭できる教育システム。それゆえ息子さんもクロスカントリーにサッカーにと、自分の好きなことを思う存分楽しむ学生生活が送れているのだそう。自分の好きな気持ちをもとに多くの経験を積んでいく、それがきっと後に繋がっていく。そう信じているから、えみさん自身もいまの教育環境に大きな魅力を感じているという。

幼少期の3年間を台湾で過ごし、日本に帰国したときのエピソードが息子さんのひととのして本質を見るようで秀逸だった。

えみさんの願いで通い始めたスイミングスクール、先生が話を聞かない子どもに対して水をかけ注意する様子にショックを受けた9歳の息子さん。

「なぜ大人だからという理由だけで子どもに水をかけることを良しとされるのかが理解できない。水泳を習うことはいい、けれどあんなに無礼な先生のクラスには今後行きたくない。」

年齢や肩書きなど関係なく、本来「ひと」として皆公平のはず。威圧的にひとをコントロールしようとすることへの違和感や、冷静に対等な話合いで状況を改善すべき、という意見をはっきりと口に出来る感性と聡さに大人として目を覚まされたような気持ちになる。そして、シンガポールでの幼少期の経験から自身の職業観を築いてきたえみさんとのシンクロ具合にも。息子さんの意志を尊重して見守る母子関係の為せる業、同世代の子どもを持つ母親として学ぶべきことが多くある。

自分に明らかなこと、大らかなこ

ひとつ信念を持ちあとは柔らかく流れに身を任せていると、不思議と必要なものにも出会えていく。えみさんがこのgozenと出会った経緯がまさにそれだった。

SNSは普段使わないえみさんがアメリカに移住してしばらく、家具屋さんとのコミュニケーションツール目的で始めたInstagram。そこに、前触れなくgozenメンバー募集の記事がアップされてきたミラクル。もともと料理への苦手意識があったえみさん、オンラインならばと入会を即決したそう。それから1年、えみさん一家の食卓はgozenなしでは考えられなくなった。家族の誕生日やお客様へのおもてなしだけでなく、普段の食卓でもえみさんが自信を持って出せる料理のおかげで、家族の幸福度はぐんぐん上がった。移住後大きく生活環境が変わった家族のために美味しいごはんで癒したい、そんなえみさんの明確な目的意識があってこその、gozenとの必然的な出会いだったのだと思う。

自分のゴールを明らかにしておくこと、そのゴールまでの道のりにはゆとりや自由さといった大らかさがあればいい。その大らかさが新たなものを受け容れる懐となり、道中を楽しむ余裕が生まれてゆく。楽しさや余裕がきっと、ポジティブなゴールへと誘ってくれるんだろうな。

えみさんが、終始穏やかな口ぶりで伝えてくれた有難いメッセージ。またひとつ、わたしの宝ものが増えた。

妄想あさこ食堂へようこそ

えみさんをおもてなしする今月のあさこ食堂は、休日のモーニングプレート。平日は仕事に家事にと忙しい女性にとって、休日の朝ってちょっと特別。そんな朝の時間を、わたしの大好きなベーグルの朝ごはんで一緒に過ごしたくて。

全粒粉入りの天然酵母ベーグルに添えたのは、プレーンオムレツとグリルした野菜、カリカリの厚切りベーコン。ポテトサラダの具材はシンプルに玉ねぎだけ、でも粒マスタードをたっぷり効かせてパンチは忘れずに。

そして、えみさんとのインタビューで共通のお気に入りレシピとして盛り上がった塩スープは、アレンジして豆乳仕立てに。家にある野菜をたっぷり入れ、味付けは塩だけで驚くほど美味しくなる塩スープは、我が家でもパンが朝ごはんのときの定番メニュー。えみさんも、初めて作ったときの塩スープの美味しさに驚いたそう。一緒にスープをいただきながら、gozenで出会ったほかのお気に入りレシピについてもっと語り合えたらな。

ベーグルの半分はスープやオムレツたちと。そして残りの半分は濃いめのコーヒーを淹れて、自家製あんことバターの餡バターサンドでデザートタイムに突入。さらに、金柑コンポートとクリームチーズをたっぷり載せるのもおススメ!と香り高い紅茶まで淹れる自分が想像できるよう。

耳当たりがすこぶる心地いいえみさんの声を聞きながらのお喋りは、きっとお昼前まで尽きることなく続きそうだから、飲み物の選択肢は多いほうがいいんじゃないかな、とひとり妄想は止まらない!そんな至福の朝ごはん、きっといつか実現させたいな。