みなさん、こんにちは。ベルリン在住の料理研究家、島崎ともよです。今日は、メンバーさん限定レシピ「ポルトガル製のプリン型で作る懐かしのプリン」のレシピをご紹介します。

<世界を旅するレシピとは…>
私、島崎ともよが、これまで旅で出会ったごはんや、外国人の友人から教えてもらったお料理を再現したりアレンジしたレシピをお届けする企画です。旅の思い出や、友人との記憶に残る会話なども交えながら、読んでいるみなさんも世界を旅しているような気分になれるようなレシピコラムをお届けします。

ドイツ語の語学学校に通っていた頃、クラスメイトにポルトガル人とギリシャ人のハーフの美女がいた。料理人だったと言っていた彼女は、持ち寄りパーティーでポルトガルのプリンを作ってきたことがあった。そのプリンは、お花の形でびっくりするほどの大きさだったのが印象深い。

のちに知ったことだが、お花の形をしたそのプリン型は、大体のポルトガル家庭に一個はある伝統的な物らしい。

彼女が丁寧に切り分けてくれたそのプリンは、ビターなカラメルと、食べたことのないくらいのクリーミーさ、そしてとにかく濃厚な味わいが特徴的だった。と文章にするとあっさりしたもんだが、この文章から想像する3倍のカラメルの苦味と、3倍の濃厚さを想像してもらえたらちょうどいいかもしれない。

でも、どこか懐かしい味がした。日本人にしたら目が覚めるほどの甘さだったことを除いては、日本の喫茶店で出てきそうな味だなぁ、なんて思いながら楽しませていただいた。あー、そうか。だからあのカラメルの苦さだったんだな、と今書きながら思い返す。

それまで、プリンというと小さなプリン型で作るのが私のスタイルだったから、大人数で切り分けて食べるプリンは華やかで心が躍った。

今では「プリン!プリン!」と、大きな型から外すのを隙間から除いてくる子どもたちの歓声が聞こえるなら、焼き時間が倍以上かかってもいいと思える。

来客時に、ホールのプリンをデザートに出すとそれだけで会話が弾む。料理ってもちろんおいしいに越したことはないけれど、それだけが料理じゃないんだ。作る側も食べる側も気持ちが高揚して、いつもとは少し違う喜びやワクワクを感じることも、おいしさのひとつに含まれるんじゃないかと思っている。

You and I eat the same

これは私が大好きな言葉。さまざまな国の人と交流する中で、海を越えて暮らす誰かと同じようなものを食べている、というのはよく感じることだ。文化や宗教が違っても、食では分かり合えることも多い。

食をコミュニケーションツールにすると不思議と会話が弾むもんで、相手が料理好きな人だと分かればレシピを教えてほしい!とお願いするようにしている。

例のポルトガルのプリンの彼女も喜んで教えてくれた。目が覚めるほどの甘さの理由は、コンデンスミルクを1カップ以上入れていることだったと分かった時には衝撃を受けたが、そのおかけであのクリーミーさを表現できることも学んだ。

今回のレッスンはどうしようか悩みに悩んだが、私はやっぱり日本人だし甘さは控えめのおやつが好きだから、ポルトガルの型を使って作る「普通のプリン」のレシピにした。ポルトガルと日本のコラボ。ちょっと懐かしいなぁと感じる、家で作るあのプリンの味だけど、気になる人はコンデンスミルクで作ってみるのもいいと思う。

今この瞬間、このお花のプリンを家族で囲んで食べているポルトガル人はいるのかなぁ。食卓を覗きにいってみたいなぁ。