みなさん、こんにちは。ベルリン在住のナチュラルフードスタイリスト、島崎ともよです。

今日は、メンバーさん限定レシピ『マーラーカオ』のレシピをシェアします!卵をたっぷり使った蒸しパンなのですが、私にとっては思い出深く、ちょっと懐かしい味がする特別なおやつ。今回は、そんなマーラーカオのレシピを「世界を旅するレシピ」と題して、読み物と一緒にお送りしようと思います。

マーラーカオって、中国やマレーシアで食べられる点心として有名ですが、今回はマーラーカオで思い出すベトナム旅について綴ります。

世界を旅するレシピとは…
私、島崎ともよが、これまで旅で出会ったごはんや、外国人の友人から教えてもらったお料理を再現したりアレンジしたレシピをお届けする企画です。旅の思い出や、友人との記憶に残る会話なども交えながら、読んでいるみなさんも世界を旅しているような気分になれるようなレシピコラムをお届けします。

マーラーカオを作るといつも思い出すのが、今から十数年前にベトナムで食べた蒸しパンのこと。もちろんマーラーカオという名前で売っていたわけではないのだが(名前は失念)、それはどこかマーラーカオに似ている食べ物で、マーラーカオを食べると当時のベトナム旅行の記憶が鮮明に蘇ってくる。

当時、バスでベトナムのホーチミンからカンボジアのプノンペンに移動する予定だった私は、バスの中で食べるおやつ用に屋台でマフィンらしきものを買ってバスに乗り込んだ。それが何かは分からぬまま、みんなが次から次へと買っていたから自分も買ってみた、という単純な理由だ。

固そうに見えたマフィンは、実はモチモチ食感の蒸しパンだった。ホーチミンを出てから1時間半。ココナッツの香りと甘みが特徴的なその蒸しパンがちょうど半分ほどになった頃、バスはベトナムとカンボジアの国境に差し掛かった。パスポートチェックがあるため、みんなバスから一旦降り窓口へ。私も貴重品だけ持ってバスを降りた。

私はアジア人だからか、周りのカンボジア人やベトナム人とは別の列に並ぶように促された。随分と時間はかかった印象だが、無事に入国のスタンプがもらえたので急いでバスに戻る。

ん?

どこだっけ?

方向音痴と言えど、バスを降りた場所くらい分かるはずだが、プノンペン行きのバスがどこにも見当たらない。バスを探しながらウロウロしていると、トゥクトゥクのお兄さんが客引きで声をかけてきた。プノンペン行きのバスが見当たらないことを話すと、「へ?とっくの間に行ったよ。」と。

…。

なんと!私は、ベトナムとカンボジアの国境でバスに置いて行かれたらしい。

まだここはプノンペンまで3時間もある場所。バスには貴重品以外の全ての荷物も乗っている。さすがに、トゥクトゥクのお兄さんも不憫に思ったのだろう。急いでスクーターのタクシー仲間を呼んできてくれた。「このスクーターならスピードを出せば追いつけるかも!どのくらい先に進んでいるか分からないけど、日がくれる前には追いつけるだろう」みたいなことをアクセント混じりの英語で説明してきた。

そう。実はこのとき、夕暮れ時。日は沈みかけている。風をきって走るスクーターのスピードも怖ければ、暗闇が迫ってくる恐怖も感じる。自分はこのまま野垂れ死ぬかも。いや、このスクーターのお兄さんに拉致られどこか知らないところに連れて行かれて…なんて無限に押し寄せる過剰妄想からくる恐怖とが相まって、お兄さんにしがみつきながら、どうにも涙を止めることができない。

どのくらい走ったのだろう。10分なのかもしれないし1時間だったのもしれない。ただ周りは随分暗くなっていて、生ぬるい空気からひんやりとした夜に向かう空気の境目にいるのを感じる。

突然スクーターのお兄さんが大きな声で何か叫びならがら遠くを指差した。何にもない田舎道の少し先に、たくさんの大型バスが停まっているのが見えた。いわゆるSAのような休憩所で「この先はしばらく休憩所がないから、多分ここにいるはず。」とお兄さんは言う。

あたりは暗いのと、出入りのバスの土埃がひどくてよく見えない。2人でキョロキョロしていると、とびっきりの笑顔で手を振りながらこっちに向かって歩いてくる人影が。「遅いよー!どこにいたの!?」と声をかけてきたのは、なんとプノンペン行きのバスの添乗員のお兄さんだった。

国境出発後に、乗っていたはずのアジア人(私)がいないことに気づき(周りの乗客が教えてくれたらしい)、本当は停まる予定がなかった休憩所で夕ご飯を食べながらしばらく待っていたとのこと。スクーターのお兄さんに「よく追いついたね!」的なことを話して、労いで肩を叩いていた。いや違うだろ!とつっこみどころは満載だが、夕暮れ時にベトナムとカンボジアの国境で置き去りにされた私は、他の乗客に拍手されながら、無事にバスに舞い戻ることができた。

これは夢なのか現実なのか、まだドキドキする。さっきまで食べていた蒸しパンを手に取り、思い出し泣きしながらぐちゃぐちゃの感情で食べたココナッツ風味の蒸しパンの味は今もよく覚えている。

完。

実はマーラーカオって、油脂や砂糖を変えるだけで味がグッと変わるのを実感できるおやつなのです。シンプルなのはもちろんおいしいのですが、黒糖を入れると一気にコクが出て味わい深くなるし、バターを使うと濃厚で芳醇で翌日が特においしい!はちみつを入れるとしっとりと全体のまとまりがよくなります。

ココナッツオイル(香りがあるタイプ)やココナッツミルク、ココナッツシュガーなどで作ると、東南アジアに旅行に行った気分になれるかも。

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島崎 ともよ料理家/gozen主宰

1985年生まれ。新潟県出身。料理家。2018年に家族でベルリンへ移住。 2022年1月よりオンライン料理教室『gozen』をスタート。